簿記と転職
転職するなら目指したい簿記のスキルアップ
もしも転職を目指すなら、「現在の能力」のまま新しい職場を探すのではなく、ワンランク上の自分になってから活動を始めましょう。例えば、新しい資格を取得し、転職活動でアピールするなどの方法があります。なぜスキルアップしてから転職活動するのが大事なのかというと、今までよりも好条件の職場を目指せるようになるからです。転職によって給料や仕事内容が落ちてしまうと、そこから以前の高みに戻るのは難しくなります。逆に、転職に成功すれば一気にキャリアアップを成し遂げられるチャンスです。その際、特別な資格を持っていると「前の職場では能力を活かせなかった」と志望先にアピールできます。
社会で役立つ資格はいくつかあるものの、「簿記」の知識はありとあらゆる分野で応用可能です。持っていない人よりも持っている人は有利になるといえるでしょう。さらに、簿記は予め日程の定められた試験に合格すれば資格を取得できます。本人のやる気次第で短期間で得られる資格でもあるので、転職活動を見据えて学ぶのにぴったりです。また、企業は転職者について、あくまでも実務経験を踏まえたうえでのスキルを求めています。企業は中途採用枠で即戦力になれる人材を優先的に採用したいからです。簿記のように、応用範囲の広い資格は、転職活動の武器にしやすいでしょう。
1. 簿記の取得が転職で有利になる理由
転職活動で簿記の資格があると有利な理由として「帳簿についての理解力」を証明できる点は大きいでしょう。部署に限らず、組織ではいかに数字と向き合えるかが重要です。収支を計算できない従業員は、会社に利益をもたらせません。もちろん、会計ソフトなどを導入している企業なら、簿記の知識が少なくてもある程度の事務処理はできるでしょう。それでも、どの勘定科目にどんな数字を入れるかの経理実務は、従業員が個々の考えで行います。簿記の理解が深い人ほど、完成度の高い決算書を作成できるのは自明の理です。
さらに、簿記の資格は「財務分析の基礎」をアピールできる材料になりえます。経理部門への転職を目指している場合は、特に強みとして使えるでしょう。財務分析は数字の不正操作を見破るために必要な作業です。健全な経営を実現するために、財務分析を任せられる人材を探している企業は少なくありません。また、「やる気」を強く訴えることもできます。高度な簿記の資格を有しているなら、それを活かせる職場への熱意を分かりやすく表現できるでしょう。
その他「ライバルに差をつけられる」のもメリットです。経験やスキルが拮抗しているライバル志望者がいた場合、わずかな要因で採用が決まることはありえます。簿記の資格が決め手になる可能性もあるでしょう。より上位の級を取得していれば、その志望者はより有利な立場になります。
2. 転職を有利にするなら簿記2級以上の取得が必要
簿記の資格で転職を有利に運びたいなら「簿記2級以上」の取得を目指しましょう。なぜなら、簿記3級までの取得者は決して少なくないからです。学生時代や社会人になってからの空き時間を利用して、多くの人が取得しています。さらに、簿記3級の学習範囲は商業簿記に限定されています。財務分析など、業務上の深い知識が範囲に指定されているのは簿記2級以上です。中規模以上の企業になると、簿記2級以上の資格でなければ評価してくれない場合もあります。ただし、簿記の資格は実務経験とセットなのも忘れてはなりません。全く実務経験の伴わない簿記2級保有者よりも、実務経験が豊富な簿記3級保有者が有利になることもありえます。
また、試験範囲の変更も転職活動に影響を与えました。2018年から、簿記1級の内容の一部と簿記3級の内容の一部が簿記2級に組み込まれることとなりました。つまり、簿記の資格では簿記3級の難易度が下がり、簿記2級の難易度が上がるという現象が起こったのです。仮に新卒であれば、簿記3級の資格であってもアピールすることはできたでしょう。しかし、転職者であれば簿記2級以上を保有していないと武器とはいえません。もしも簿記2級以上の資格がないなら、転職活動のタイミングでの取得も本格的に検討しましょう。
3. 簿記の資格と実務を活かせる転職先は?
転職先の選択肢を増やすという意味でも、簿記の資格があると便利です。簿記の資格が重宝される職場としては企業の「経理部門」「財務部門」が代表的です。経理部門・財務部門は緻密な作業で数字と向き合う場所です。そのため、企業側もスキルが裏打ちされている人材を求めています。新卒よりも、経験が豊富で即戦力になりえる中途採用者が歓迎されやすい部門でもあります。資格に加えて実務経験も伴っているなら、転職活動での立場を有利にできるでしょう。これまでのキャリアで培ってきた能力を無駄にせず、キャリアチェンジを図れます。
また、簿記2級以上の難易度の試験に通っているなら、会計事務所や税理士事務所といった職場に就職できる可能性も大きくなります。これらは専門性が高い現場なので、好条件で働くことも夢ではありません。なお、簿記3級の資格を評価してくれる職場もあるものの、簿記2級ほどの待遇は期待できないと覚悟しておきましょう。あくまで、無資格な志望者よりは有利になることが多い程度です。簿記3級の資格でも積極的に転職を受け入れてくれる職場は派遣などの非正規雇用が多くなります。正社員として就職したいなら、志望先を十分に吟味できるだけのプロフィールを書けるよう努力しましょう。
4. 転職はタイミングを考えることも大事
「タイミング」も転職活動では大事です。簿記の資格を活かしたいなら、転職する時期には注意しましょう。簿記3級までの資格しかないのに転職活動を始めても、企業から高く評価される可能性は高くなりません。せっかく十分な実務経験があるにもかかわらず、資格で判断されるのはもったいないともいえます。特に、経理部門・財務部門など、簿記の資格が重要視される職場を志望するなら簿記3級では不十分でしょう。
理想としては、簿記3級を取得した後で実務経験を積むことです。そして、転職を考え始めた時点で簿記2級の勉強を始めます。正式に簿記2級の資格を取得してから転職活動に踏み切ると、有利な立場で企業にアピールできるでしょう。また、志望先を具体的に想定したうえで、転職活動の準備を進めていきましょう。志望先に相応しい能力や経験を誇れるようになれば、ライバルよりも目立てます。簿記の知識があるだけでは、転職活動の武器にすることは困難です。しかし、資格と実務経験が加わったとき、企業側にとって魅力のある人材に変わります。転職は焦らず、計画的に準備をしましょう。そして、時間を無駄にせず、必要な資格を勉強するなどの努力を怠らなかったら、企業が放っておかない人材になることができます。
5. 実務経験は転職の武器になり得る
簿記の資格は確かに転職活動で有利です。ただし、実務経験を積むことでさらに多くの職場から求められるアピールポイントに変わります。そして、実務経験を証明するためには、さらに上の資格を取得するのもひとつの方法です。簿記3級の資格を持っているなら、簿記2級を取得してみるなどして、武器を増やしてから転職活動に踏み切りましょう。