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簿記の仕訳

簿記の仕訳の方法は?問題を解くために必要な考え方を解説!

簿記の勉強をするにあたって、仕訳の問題は避けて通ることができません。簿記の仕訳はどのようにして行うのでしょうか。簿記の勉強を始めたばかりの人にとっては、仕訳の考え方は分かりにくく感じてしまうこともあります。簿記の仕訳には細かいルールがあるため、それを理解することが必要です。この記事では、簿記の問題を解くために必要な仕訳の考え方について解説します。

1. そもそも簿記の目的って?

簿記の目的は、企業を経営する中で発生するお金の動きを記録することです。企業では日々の業務で発生するお金の流れを分類して記録しており、分かりやすくまとめています。お金の流れは簿記では「取引」と表現し、資産、負債、純資産、費用、収益のいずれかに分類することで管理します。この簿記を使って1年分のお金の動きを集計したものが、決算書です。決算書を見ることで、その企業の経営状態を知ることができます。この決算書は企業内で確認するだけでなく、融資を検討する銀行や株主なども見ることができます。銀行や株主は決算書を確認することで、今後の融資や投資の方向性を決めるのに役立てるのです。

2. 簿記の問題演習で重要な「仕訳」とは?

簿記の問題演習では、「仕訳」は重要な項目です。仕訳とは、取引を表す勘定科目と金額を仕訳帳に書く作業のことです。具体的な書き方について見てみましょう。取引は、必ず「借方」と「貸方」の2つの要素に分けて記入します。資産が増えたときは借方に、負債が増えたときは貸方に仕訳します。例えば商品を購入した場合、仕入は費用になるので「仕入」の勘定科目は増加しますが、商品の代金を支払っているのでその分資産である「現金預金」の勘定科目が減少します。「仕入」が借方、「現金預金」が貸方です。2つの要素に分けて取引を把握することにより、増えたものと減ったものを明確にすることができます。

3. 簿記の仕訳の勘定科目の種類

仕訳をするとき、取引を資産、負債、純資産、費用、収益という5つのグループに分けて管理します。それぞれグループの中に沢山の項目があり、それを勘定科目と呼びます。それぞれの勘定科目を具体的に見てみましょう。資産とは企業活動に必要な物や権利のことで、将来的な収入になる受取手形や売掛金も資産に含まれます。資産の勘定科目には、現金預金、受取手形、売掛金、建物、投資有価証券などがあります。次に負債とは会社の外から調達したお金で、返済しなければならないもののことです。負債の勘定科目には、支払手形、買掛金、未払金、未払費用、前受金などがあります。
純資産とは出資金や利益から社内にストックしておいたお金で、事業の元手になるもののことです。純資産の勘定科目には、資本金、利益準備金、繰越利益剰余金などがあります。費用とは、企業活動をするためにかかったお金のことです。費用の勘定科目には、仕入、消耗品費、通信費、租税公課、雑費などがあります。最後に収益とは、企業活動によって得たお金のことです。収益の勘定科目には、売上、雑収入、固定資産売却益などがあります。

4. 問題を解くために覚えておきたい簿記の仕訳のルール

仕訳を行う際、複式簿記では左が「借方」で右が「貸方」と決まっています。この記載ルールはしっかり覚えておきましょう。資産、負債、純資産は貸借対照表、費用、収益は損益計算書に記載します。項目によって、借方か貸方のどちらに記載するかのルールがあります。具体的には、資産と費用は増えたら借方、減ったら貸方に記載するのがルールです。逆に負債と純資産と収益は、増えたら貸方、減ったら借方に記載します。どのような場合でも、借方・貸方それぞれの合計金額は必ず一致しなければなりません。もし一致しない場合は、仕訳が間違っているということになります。ただしトータルの金額が一致するのであって、勘定科目の数も一致するとは限らないことに注意が必要です。
初めのうちは分かりにくいかもしれませんが、慣れれば問題なく仕訳することができるようになります。必ず借方と貸方に仕訳するということは、どちらか片方に記載する内容が分かればもう片方も自動的に決まるということです。これを覚えておけば、仕訳への苦手意識も無くなるのではないでしょうか。

5. 簿記における仕訳の手順

仕訳の役割と内容について理解できたら、次は実際に仕訳をしてみましょう。簿記における仕訳の手順を説明します。

Ⅰ. 取引を2つの要素に分ける

取引について、資産、負債、純資産、費用、収益のどれが増えてどれが減ったのかを確認する必要があります。取引を2つの要素に分けて考えます。1つの取引でも、物とお金の動きをそれぞれ追ってみると要素を2つに分けることができます。
例えば、商品を仕入れて代金を支払うという取引で考えてみましょう。この場合は仕入(費用)が増加し、現金預金(資産)が減少することになります。その理由は次の通りです。まず仕入は費用であり、費用が増えたので借方が増加します。次に、商品を購入するための現金預金は資産です。商品を購入することで現金預金が減ったので、資産が減少します。
取引としてまとめて考えてしまうと分かりにくいかもしれませんが、内容を分解して考えることで仕訳をすることができます。複雑な取引になっても単純な物とお金の動きに落とし込むことが、仕訳の第一歩です。

Ⅱ. 勘定科目を決定する

取引を2つの要素に分けてそれぞれの増減を明らかにしたら、次は勘定科目を決定します。勘定科目には様々なものがあり、取引の種類に合わせて設定することが必要です。勘定科目の付け方にルールはありませんが、一貫性を持たせることは大切です。銀行や株主など、外部の人が見たときにも分かりやすいように勘定科目を決定しましょう。例えば机を購入したとき、机の勘定科目は「備品」で現金預金の勘定科目はそのまま「現金預金」とするのが一般的です。そして備品(資産)が増加し、現金預金(資産)が減少したという記載をすることになります。

Ⅲ. 金額を記載する

借方と貸方にそれぞれ記載する勘定科目が決定したら、最後に金額を記載します。金額は借方と貸方の両方に記載する必要があります。一つの取引においては、借方と貸方の金額は同じになることを覚えておきましょう。例として、5,000円の机を購入したときの金額の記載方法を説明します。この場合は、借方に備品(資産)5,000円が増加したと記載し、貸方に現金預金(資産)5,000円が減少したと記します。このような記載をすることで、多くの取引があってもすぐに企業全体のお金の状況を把握できます。
机のような比較的金額が小さなものを購入したときは、借方と貸方の勘定科目の数が一致するので分かりやすいです。ただし、何かを分割で購入した場合などは、勘定科目の数は一致しないことに注意が必要です。分割支払いで一部の支払いが完了しているときは、貸方の勘定科目は現金預金と未払金(もしくは買掛金など)というように2つに分かれます。このような場合でも、購入した備品の金額と先述の現金+未払金の金額は一致しているはずです。
一つの取引において借方と貸方の金額の合計は必ず一致するというルール(貸借平均の原則)が、ここでも適用されていることが分かります。

6. 仕訳の考え方をマスターして簿記の問題を解こう

簿記の問題を解くには、まず仕訳についてしっかり理解する必要があります。仕訳の考え方が難しいと感じるなら、予備校の簿記講座の受講を検討してみてはいかがでしょうか。簿記講座を受講すると、一人で参考書などを使って勉強するよりも分かりやすい解説を受けることができます。仕訳の考え方をマスターして、簿記の問題を解けるようになりましょう。

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