簿記会計資格試験の種類
簿記会計資格試験の種類
簿記会計の資格試験は、簿記会計の資格試験の各級のレベルに応じた簿記についての知識を持ち、簿記会計に関する処理能力があることを検査する資格試験です。
簿記会計の資格試験の中にも様々な種類があります。大きく分けて、商業簿記を基本とした一般的な簿記会計の資格試験と、特殊な職種のみに用いられる簿記の能力を検査する簿記会計の資格試験があります。
1. 一般的な簿記会計の資格試験
初心者が受験する簿記会計の資格試験の試験科目は、主に商業簿記のみです。上位級になるにつれて工業簿記さらに、原価計算・会計学などの試験科目が含まれるようになります。
一般的な簿記会計の資格試験には、主催団体による3種類があります。それぞれの資格試験ごとに等級があります。3種類の簿記会計の資格試験の一覧表を下に示しました。
簿記会計資格試験の種類 | 主催団体 | 級 |
---|---|---|
日商簿記 | 日本商工会議所 | 1級・2級・3級・初級・原価計算 |
全経簿記 | 全国経理教育協会 | 上級・1級・2級・3級・4級 |
全商簿記 | 全国商業高等学校協会 | 1級・2級・3級 |
Ⅰ. 日商簿記検定試験
a. 日商簿記検定試験の試験情報
日商簿記検定試験の試験科目・試験時間・合格基準・試験開催月は、以下の表の通りです。
試験級 | 試験科目 | 試験時間 | 合格基準 | 試験開催月 |
---|---|---|---|---|
1級 | 商業簿記・会計学 工業簿記・原価計算 |
180分 | 70点 | 毎年6月・11月 |
2級 | 商業簿記・工業簿記 | 120分 | 70点 | 毎年2月・6月・11月 |
3級 | 商業簿記 | 120分 | 70点 | 毎年2月・6月・11月 |
初級 | 商業簿記(ネット試験) | 40分 | 70点 | 試験会場による |
原価計算 | 原価計算(ネット試験) | 40分 | 70点 | 試験会場による |
日商簿記検定試験は、簿記会計の資格試験の中で最もよく知られた資格試験です。日商簿記検定試験は、他の資格試験に比べて圧倒的に知名度も高く、受験者数も多いです。「簿記会計の資格といえば、暗黙の裡に日商簿記検定試験の資格だと解釈される」といっても過言ではないと思われます。
受験資格に制限はありません。大学三年生以上で法律学又は経済学を1科目以上含めて62単位以上を取得していなくても、日商簿記検定試験1級合格で税理士の受験資格が得られます。
日商簿記検定試験の主催団体である日本商工会議所とは、全国の商工会議所を総合調整し、意見を代表する団体です。全国の商工会議所を会員としています。
商工会議所とは、地域の商業や工業の発展のための公共性のある民間団体です。地域ごとの商業や工業を営む人たちを会員としています。政府や政党に対して政策を提案したり、会員を代表して要求を申し入れたりします。中小企業の事業を援助し、地域の経済の活気づけを行う企画などをしています。
b. 足切り制度
日商簿記1級は、4科目のうち1科目でも40%未満の得点の科目がある場合、合計で70%以上の得点であっても不合格となる足切り制度がありますので受験上留意して下さい。
Ⅱ. 全経簿記検定試験
a. 全経簿記検定試験の試験情報
全経簿記検定試験の試験科目・試験時間・合格基準・試験開催月は、以下の表の通りになります。
試験級 | 試験科目 | 試験時間 | 合格基準 | 試験開催月 |
---|---|---|---|---|
上級 | 商業簿記・会計学 | 90分 | 70点 | 毎年2月・7月のみ |
上級 | 工業簿記・原価計算 | 90分 | 70点 | 毎年2月・7月のみ |
1級 | 商業簿記・会計学 | 90分 | 70点 | 毎年2月・5月・7月・11月 |
1級 | 工業簿記・原価計算 | 90分 | 70点 | 毎年2月・5月・7月・11月 |
2級 | 商業簿記・工業簿記 | 90分 | 70点 | 毎年2月・5月・7月・11月 |
3級 | 商業簿記 | 90分 | 70点 | 毎年2月・5月・7月・11月 |
全経簿記検定試験上級合格により、日商簿記検定1級合格と同様、大学三年生以上で法律学又は経済学を1科目以上単位取得し、かつ総取得単位数で62単位以上を取得していなくても、税理士試験の受験資格が得られます。税理士試験の受験資格を得る目的で受験する場合、日商簿記検定試験1級と全経簿記検定試験上級を併願するという方法が考えられます。日商簿記検定試験1級と全経簿記検定試験上級のいずれか一方に合格できなくても他方に合格できれば税理士試験の受験資格が得られるからです。全経簿記上級の合格率は約20%ですので、合格率が10%前後の日商簿記1級と比較して合格しやすいため、税理士試験の受験資格取得のために受験される場合は、全経簿記上級を受験すべきと言えます。
主催団体は、全国経理学校協会です。全国の260程の専門学校が加盟している公益社団法人です。簿記と経理と税務の分野の資格試験を行っています。
b. 科目別合格制
全経簿記1級・2級は、科目別合格制になっており、いずれか一方の科目だけでも受験できます。
Ⅲ. 全商簿記検定試験
a. 全商簿記検定試験の試験情報
全商簿記検定試験は、正式名は簿記実務検定試験といいます。全商簿記検定試験の試験科目・試験時間・合格基準・試験開催月は、以下の表の通りとなります。
試験級 | 試験科目 | 試験時間 | 合格基準 | 試験開催月 |
---|---|---|---|---|
1級 | 会計 | 90分 | 70% | 毎年1月・6月 |
1級 | 原価計算 | 90分 | 70% | 毎年1月・6月 |
2級 | 商業簿記 | 90分 | 70% | 毎年1月・6月 |
3級 | 商業簿記 | 90分 | 70% | 毎年1月・6月 |
商業高校で使用している教科書を基にして出題されます。全商簿記検定試験1級の取得が大学の推薦入学の基準とされています。1級は、会計か原価計算のどちらか一方の合格後に、4回までに開催される検定試験でもう一方に合格すると、1級取得となります。
誰でも申し込むことのできる試験です。ただし、商業高校でしか資格試験の申し込みができません。主催団体である全国商業高等学校協会は、高校生の商業教育を広め発展させることを目的とした公益財団法人です。
b. 科目別合格制
全商簿記1級は、科目別合格制になっており、いずれか一方の科目だけでも受験できます。一方の科目に合格してから4回以内にもう一方の科目に合格すると全商簿記1級合格となります。
2. 特殊な簿記資格試験
特殊な産業の簿記は、特殊な仕訳をしなければなりません。場合によっては、作成する帳票類なども異なります。一般的な簿記でも特殊な簿記でも、多くは就職先で処理の仕方を学んでいくものです。
しかし、経理担当者が、開業したばかりの特殊な産業の経理を行うという事もまれではありません。この場合は、経理担当者が自分で勉強しなければなりません。特殊な産業の簿記に関する出版物は、限られていますし値段も高いです。さらに、店頭で入手できるのは、限られた書店のみです。法律によって会計処理方法について大幅な変更があった場合などは、出版物自体がない時もあります。ネット情報は断片的な情報を入手するのには向いていますが、体系的に学習するのには不向きです。
資格試験は、学習体系も整備されテキストも存在します。簿記の学習には、非常にありがたいものだと思います。特殊な簿記の資格試験が存在するものは、以下の通りとなります。
Ⅰ. 建設業経理士検定試験
建設業は会計処理方法に特殊な点が多くあります。建設業経理士検定試験は建設業の経理や財務の専門的な知識と処理能力を検査する資格試験です。
項目 | 詳細 |
---|---|
資格試験主催団体 | 建設業振興基金 |
資格試験の等級 | 建設業経理士1級・2級・3級・4級 1級は財務諸表・財務分析・原価計算の科目合格制 科目の合格は5年間有効 |
資格試験方式・試験時間 | 記述式 |
日程 | 上期(9月)1級・2級 下期(3月)1級・2級・3級・4級 |
受験資格 | 制限なし |
申し込み方法 | 書面又はインターネット |
合格基準 | 正答率70% |
合格率 | 1級で20%~30% 2級で30%~40% |
難易度 | 1級で日商簿記検定試験の1級と2級の間程度 2級で日商簿記検定試験の2級と3級の間程度 |
資格取得のメリット | 建設業経理士1・2級は経営事項審査の評価対象の一項目となっています。 ※経営事項審査とは、公共事業の入札ができるかどうかの判断の資料となるものです。建設業界への就職・転職には有利な資格です。会社によっては、資格手当が支給されます。 |
Ⅱ. 地方公会計検定試験
平成27年から実施されている資格試験です。地方公会計とは、地方公共団体で行われる会計のことです。資産や負債の正確な把握や管理・住民への分かりやすい情報開示・行政の評価などを目的としています。
公会計によって作成される財務書類や固定資産台帳の作成を行う上で必要な知識や計算能力を持っていることを検査する資格試験です。
項目 | 詳細 |
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資格試験主催団体 | 日本ビジネス技能検定協会 |
資格試験の等級 | 1級・2級・3級 |
資格試験方式・試験時間 | マークシートによる選択方式 2級120分・3級90分 |
日程 | 日本ビジネス技能検定協会のWebサイト等で確認して下さい。 |
受験資格 | 制限なし |
申し込み方法 | WEB申し込み |
合格基準 | 正答率70% |
合格率 | 2級30%・3級40% |
難易度 | 事前に日商簿記検定試験2級の取得が望ましいです。 |
資格取得のメリット | 履歴書に地方公会計検定試験合格と記載できるようになります。官公庁の会計事務の学習のための資格試験です。地方公務員を目指す人又は地方公務員で会計事務職の人にとって有用な資格です。 |
Ⅲ. 農業簿記検定試験
平成26年から実施されている資格試験です。昨今の農業経営は法人化が増えるなど、大きく変わってきています。それに対応した農業経営管理のための知識と処理能力を検査する資格試験です。
項目 | 詳細 |
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資格試験主催団体 | 日本ビジネス技能検定協会 |
資格試験の等級 | 1級・2級・3級 |
資格試験方式・試験時間 | マークシートによる選択方式 1級,2級120分・3級90分 |
日程 | 7月・11月 詳細は日本ビジネス技能検定協会のWebサイト等で確認して下さい。 |
受験資格 | 制限なし |
申し込み方法 | WEB申し込み |
合格基準 | 正答率70% |
合格率 | 50% |
難易度 | 事前に日商簿記検定試験2級の取得が望ましいです。 |
資格取得のメリット | 履歴書に農業簿記検定試験合格と記載できるようになります。農業経営者には有用な資格です。 |
Ⅳ. 公益法人会計検定試験
公益法人会計検定試験の前身は、昭和46年に始まった公益法人会計技能試験です。現在2級と3級があります。1級は策定中です。
項目 | 詳細 |
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資格試験主催団体 | 全国公益法人協会 |
資格試験の等級 | 1級(策定中)・2級・3級 |
資格試験方式・試験時間 | 3級はCBT方式。試験時間120分CBT方式とはコンピュータにより出題及び解答する試験方式です。2018年より全国で受験可能となりました。 2級は筆記式。試験時間100分。2019年より東京と大阪で実施されます。 |
日程 | 年1回。詳細は全国公益法人協会のWebサイト等で確認して下さい。 |
受験資格 | 制限なし |
申し込み方法 | インターネット申込 |
合格基準 | 正答率70% |
合格率 | 3級合格率は50%~60%程度 |
難易度 | 公益法人会計検定試験2級≒日商簿記検定試験2級 公益法人会計検定試験3級≒日商簿記検定試験3級 仕訳の仕方や貸借対照表などの財務諸表作成方法だけでなく、公益法人会計基準の内容も範囲に含まれています。 |
資格取得のメリット | 履歴書に公益法人会計検定試験合格と記載できるようになります。公益法人への就職や転職を目指す人又は公益法人内の会計事務職の人にとって有用な資格です。 |
Ⅴ. 財務報告実務検定試験
2010年からスタートした会計資格試験です。金融商品取引法・会社法・証券取引所における会社の情報開示を行う書類の作成能力を測定します。受験者で上位の点数を取られた方には、公認会計士や東京証券取引所にお勤めの方が名を連ねておられます。
項目 | 詳細 |
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資格試験主催団体 | IPO実務検定協会 |
資格試験の等級 | 標準レベル試験・上級レベル試験 |
資格試験方式・試験時間 | 標準レベル試験:CBT形式(コンピュータによる試験)60分 上級レベル試験:CBT方式と記述式試験90分 |
日程 | 随時 |
受験資格 | 標準レベル:制限なし 上級レベル:標準レベル合格又は実務経験3年以上 |
申し込み方法 | インターネット |
合格基準 | 正答率70% |
合格率 | |
難易度 | 非常に難しいです。 |
資格取得のメリット | 公認会計士や企業でディスクロージャーに携わる方の学習としても役に立つ、スキルアップのための資格試験です。 |
Ⅵ. IPO実務検定試験
株式会社を新規上場させるためのスキルを身に着けた人材の育成を目的とした資格試験です。
項目 | 詳細 |
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資格試験主催団体 | IPO実務検定協会 |
資格試験の等級 | 開示様式理解編・連結実務演習編 |
資格試験方式・試験時間 | CBT形式(コンピュータによる試験) |
日程 | 日時を自由に選択できます。受験可能日・会場はWebサイトでご確認下さい。 |
受験資格 | 制限なし |
申し込み方法 | インターネット |
合格基準 | 正答率70% |
合格率 | 60% |
難易度 | |
資格取得のメリット | 株式上場の実務に携わる人が体系的に知識を学ぶことができます。合格者は日本IPO協会会員になり、IPO人材バンクに登録することができます。登録により、法改正等の新しい情報提供がされます。 |
Ⅶ. ビジネス会計検定試験
財務諸表の分析能力を測定する資格試験です。
項目 | 詳細 |
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資格試験主催団体 | 大阪商工会議所 |
資格試験の等級 | 1級・2級・3級 |
資格試験方式・試験時間 | 1級はマークシートと記述式で150分 2級・3級はマークシートで120分 |
日程 | 1級:3月 2級・3級:3月・9月 |
受験資格 | 制限なし |
申し込み方法 | インターネット |
合格基準 | 1級は正答率70%かつ論述式50% 2級・3級は70% |
合格率 | 3級50%~60% 2級30%前後 |
難易度 | 2級・3級は学習すれば合格できるレベルです。1級は相当の勉強が必要です。 |
資格取得のメリット | 財務諸表を理解する力を付けるための試験です。取引先の情報の理解、株式投資など様々な場面で知識が役立ちます。 |
Ⅷ. FASS検定試験(経理・財務スキル検定)
日本CFO協会が2005年度下期より実施・運営している検定試験です。経済産業省が開発した「経理・財務サービス・スキルスタンダード」を基準として、経理・財務の実務家のスキルレベルを客観的に測定する試験です。
項目 | 詳細 |
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資格試験主催団体 | 日本CFO協会 |
資格試験の等級 | 等級はなく、同一試験による成績により5段階評価 |
資格試験方式・試験時間 | 全国にある試験センターでコンピューター受験 試験科目は、資産・決算・税務・資金90分 オプション科目(英語)は、30分 |
日程 | 上期:5月1日~7月31日 下期:11月1日~1月31日 |
受験資格 | 制限なし |
申し込み方法 | インターネット |
合格基準 | 合否ではなく総合点(満点:800点)から5段階のレベルでスキル評価 |
合格率 | なし |
難易度 | レベルCで簿記3級程度 |
資格取得のメリット | 新しい資格ですが、社員教育として採用している大手企業があります。2016年から「FASS人材バンク」で、職業紹介サービスもおこなっています。 |
Ⅷ. FASSグローバルテスト試験
日本CFO協会が2012年度から実施している検定試験です。FASSが対象とする業務範囲のうち標準的な業務を範囲とする検定試験です。7ヵ国語で受験することができます。日本人が英語版を受験するなどということも出来ます。(英語・中国語・韓国語・インドネシア語・ベトナム語・タイ語・日本語)
項目 | 詳細 |
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資格試験主催団体 | 日本CFO協会 |
資格試験の等級 | 等級はなく、同一試験による成績により5段階評価 |
資格試験方式・試験時間 | インターネット試験 試験科目は、資産・決算・資金・経営管理60分 |
日程 | 上期:5月1日~7月31日 下期:11月1日~1月31日 |
受験資格 | 制限なし |
申し込み方法 | インターネット |
合格基準 | 合否ではなく総合点(満点:800点)から5段階のレベルでスキル評価 |
合格率 | なし |
難易度 | 難易度は言語能力にも左右されます。 |
資格取得のメリット | アジアの現地の経理・財務スタッフの能力の測定をする検定試験として有効です。 |
簿記それ自体の種類
簿記それ自体の種類については、簿記の種類のページをご覧下さい。